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2005.01.13

あれこれ

 1月8日は山中湖にある唐組・乞食城へ。凍えるような寒い空気の中で富士山がきれいに青空にそびえたち、湖面に見事な「逆さ富士」を映し出していた。9日に帰り10日は渋谷で日本記号学会の理事会。数ヶ月ぶりだったが、ここのところ体を壊していた山口昌男さんが随分と元気を回復していたのがうれしかった。1月29日の唐さんの最終講義にも駆けつけたいと言ってくれた。11日は多摩美で新年会。結局ジャージは返ってこなかった。下の写真は是非blogに載せてくださいと言った永澤君とのツーショット。

nagasawa

 まあ、そんなわけでほぼ毎日飲み会だった。大学も始まって会議や雑用で忙しくなってきたが、どうも大学の内側では相変わらず面白くないことばかりが起こっていてたちまち憂鬱になる。記号学会では毎年5月に大会をやっているが、今年は高田馬場にある東京富士大学で5/21-22に「<大学>はどこに行くのか?」という統一テーマでやることにした。誰でも自由に参加できる開かれた学会なのでどんどんいろいろな人に聞きにきてほしいと思っている。
 国立大学の独立法人化は全く報道されないところでとんでもない混乱や事件を数々引き起こしているのだが、その根幹にある流れはほとんど誰もきちんと論じてはいない。私大にしたところで状況は同じである。「大学の自治」の破壊に反対し、「産学共同」を嘆く旧「進歩的知識人」たちと、「国際競争力」の獲得のために競争原理を導入しなければならないとする推進派との議論とは全く違った視点からほとんど崩壊しつつある現在の「大学」を論じたい。
 ネオ・コンという言葉はずいぶん知られるようになったが、ネオ・リベラリズムという一見それに対抗するような立場も本質的にはネオ・コンと同一なのだ。それはアメリカの共和党と民主党や、日本の自民党と民主党の政策がほとんど交換可能なほどに酷似しているのと同じである。要するにそれは冷戦終焉以降の「グローバル・スーパーマーケット」の中でいかに競争に勝ち残るかという唯一の「課題」を共有しているのだ。だから保守とリベラルの立場は容易に逆転する。なんだかんだ言ったってこのグローバル・マーケットで生き残れる者だけが勝ちなのだ。それがそれ以外のすべての問題に優先する。だから、これは日本の対北朝鮮政策や対イラク政策と同じ論理で動いているのである。
 有馬朗人文部大臣の時に現在の大学改革のデザインのほとんどが作られている。だいたい十年前である。その時の国会の文教委員会の議事録を見ていると、現在の大学改革を動かしている底流にあるものが見え隠れしていて面白い。たとえばある委員によれば、戦後教育の最大の不幸は、大学に住み着いてきた自称「進歩的知識人」である。彼らはソ連や北朝鮮を理想国家のように宣伝して、戦後日本社会を常にミスリードし続けてきた。大学をまともにするためにはこうした「進歩的知識人」を一掃し、社会に役立つ人材を作り出すような改革を行わなくてはならないと主張する。つまり、「知識人」と「社会や産業界ともっと密接に結びつかなくてはならない大学」とを分断しなくてはならないというのが、確実に一つの根拠だったのである。もう一つは大学の「国際競争力」である。数値化された格付けによってすべてが順位づけられる世界で、日本の大学はこのままでは生き残れないだろうというような議論である。当時自民党の議員だった栗本慎一郎さんもこのような立脚点に立っている。橋爪大三郎とか上野千鶴子と言ったような少し先の見える元「進歩的知識人」たちもまた、こうした「国際競争力」の論点に立っているように思われる。
 ぼくは大学はそれとは全く別の「隙間」の空間でなくてはならないと思っている。つまり、時代の歩みと完全にシンクロしてはならない25時間目の場所こそが大学に残されなくてはならないと考えているのだ。それはぼくが「アート」や「文学」に託しておきたいと考える「空き地」の場所なのだ。システムがすべてを窒息させ、スーパーマーケットの売り場面積を獲得しなければ生き残れないと考える神経症的な世界から距離を取って物事を考えられる場所こそが大学なのだと思いたい。
 いずれにしても様々な立場から、これまで誰も語らなかった現代の大学論をやってみたいと考えている。

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