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2005.05.03

新宿花園神社・唐組の「鉛の兵隊」開幕

 4月30日が初日。400人の大入り満員の観客が押し掛け、80人近くの関係者が顔を出す。いろいろな人が居て、終わった後の宴会もやや混乱状態。余りにも人が多すぎる。大久保鷹さん、金守珍さんら新宿梁山泊メンバー、近畿大学の松本、西堂さんたち、新聞社の人たちや演劇評論家の面々。そのまま二日目5月1日にも。日曜なのに客は減らない。やはり400人近い。さすがに関係者は減っていて、昨日の半分。それでも四谷シモンさん、安保由夫さんはじめ旧状況劇場の面々、常連の小田島雄志さん、連チャンの大久保鷹さん、一月に結婚して以来久々に顔を見る新宿梁山泊の近藤結宥花さん、三浦信子さん、梶村ともみさん。いろいろな「事情」が渦巻いているが、まあそれらもいずれにしても唐さんの周りにいろいろな人たちが集結しているということの結果なので、とりあえずは良しとしよう。今年中にそれらの「いろいろ」がいろいろな形で結実して行くことになるのだから。
 芝居の方は大阪、初日、二日目と進化してしっとりとなかなかいい感じだ。唐さんの場合、とにかくスタイルが完全に世界中の他の「演劇」とは全く異なるので、どう受け止めるかは個人によって相当違ってくる。「テーマ」とか「物語」で見ても、一度見たくらいではどうせ全く理解できないだろう。ぼくは一作品あたり十数回は見るが、実はそれでもよくわからないことがある。「問題」の演劇や「表象」の演劇では全くなく、唐の脳の神経回路がそのまま裸線のままむき出しになっているような複雑な戯曲構造なのである。たまたま、それが観客の時代感覚や世代的な記憶とシンクロする時にだけそれはとてつもない「名作」になる。「唐版・風の又三郎」や「盲導犬」や「少女都市からの呼び声」はそうした名作だった。だが、そうでない時にもそのテキストは他の書き手の誰にも真似できない閃光を発している。それを「前のめり」になって唾と汗をはき散らしながら熱演している役者たちの肉体の中に読み取ることができなければ、目の前で起こっていることから生まれるとてもない「快楽」を受け止めることはできない。その「現在」を楽しめなければ、すべては逃れ去って行ってしまう。それを「理解」しようとしたり、他の作品と「比較」しようとしたりしてはいけないのだ。今回の場合は「指紋」の渦巻きがイラクの砂嵐に変り、それが北海道のアイヌ出身の入れ墨師の描く渦巻きに変って行くイメージの流れに身を任せることができるかどうかが重要な分かれ目になる。もう一つはスタントに表される「代行」というテーマだ。「代行」は、何を誰が「代行する」かというこが問題なのではない。そうではなく「代行」というプロセスそれ自体が重要なのではないだろうか。そうした「代行」の中に、いくつかの決まりきったパターンが無数の組み合わせを生み出す「指紋」の不思議さがあり、北海道、朝鮮半島、満州、ガダルカナル島といった歴史上の記憶が渦を巻くように重なり合う記憶の不思議さがある。
 唐の作品を見る場合の一つのヒントは、それぞれの新作戯曲で唐十郎自身が「何の役」を演じ、どのような「現れ方」をしているかということだ。「夜壷」では資本の代表である白皮夫人、「闇の左手」では「偽の代行業者」である微笑小路、「糸女郎」では捨てられたジゴロ、「闇の左手」では「まだら惚け」の詩人、「津波」では「伝説の便器職人」であり、生ける「脳散乱巣号」、そして今回は伝説のスタントマンで生ける塩ジャケを演じている唐が(相変わらず自分が一番目立とうとしながら)、何を言おうとしているのかに耳を傾けなくてはならない。「鉛の兵隊」はけっしてイラクに派遣された自衛隊の話などではないし、その地で「指紋=アイデンティティ」を無くした日本人の話などでもない。「渦」と「代行」が主役なのだ。そして、「トマト」や「銀の匙」や「鉛の兵隊」といった魅力的なオブジェたちがそこに絡まり合い、さらに唐組の役者たちの生きた身体性が重なり合うときに、それは熟したトマトのようなかぐわしき香りを発するのだと思う。そして、その最も完熟した日がいつになるのか分からないが、それまでぼくはここに通い続けようと思う。
 写真は唐ゼミから参加して頑張っている伊東しげ乃と辻孝彦。何だか感慨深い。shigeno

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