« やるせない | トップページ | あれれ »

2005.08.07

補足するなら‥‥

 1. どうして、そんなにそれなりに一生懸命にやった学生に対してきびしいことを言うのかと思われるかもしれない。
 周囲に「ものを作りたい」という学生が増えて行けば当然そういう安易な考え方をするものも増えていく。それは芸大や美大だって同じことだ。分かりきったことだが、芸大だろうが美大だろうが東大だろうが、先生も学生も大半がダメダメな奴らに決まっている。世の中にはそんなに面白いものは存在しないし、ほとんど全部は屑の固まりのようなものだ。だったら、あきらめて「まあ、お前らにしてはよくやった」と褒めて上げた方が人を育てることになるのではないかと思われる方もいるかもしれない。最近はこの「褒めて育てる」教育が流行りだ。受験勉強とか陸上競技とかやることが最初から決まっていることならそれもいいけどね。そう、問題はどっち向いて走るかということなのだ。お前ら走っている方角が違うだろ?とちゃんと言ってあげることは重要だし、それを見ている他の学生たちにもそれを分からせてあげることは重要なのではないかと思う。だから、ぼくは断固として「壁」となって立ちはだかろうと思っている。広告のコピーとか、音楽のPVとか、イラストとか、コミックとか、アニメとか、J−POPとか、DJとか、娯楽映画とか、トレンディドラマとか−−そんな屑の中で育ってきて、そんな屑をおいしい食べ物だと錯覚して、それと似たようなものを作ることが「クリエイティヴ」だと思い込んでいる奴らだって、壁として立ちふさがり、前にも後ろにも進めない「ごきぶりホイホイ」の粘着シートの上に置いてやれば、粘着シートごと持ち上げて飛び上がったり、脚をちぎっても逃げ出して行ったり、見ていて驚いてしまうようなすごい力を発揮してしまうこともあるのだ。嶋本昭三が言っているように、こんな風に人の100の力が200にも300にも膨れ上がる瞬間だけが面白いのである。そういう「場所」を作り出したいと思っているし、そういう活動があれば全力で支援したいと思っている。オープンキャンパスに関してはその完成度やスタイルが問題なのではない。やっている連中の取り組み方や方向性、プロセスが気に入らないのだ。これは絶対に譲れない。もっともこれに関わった四年生の大半は業界や放送局など、そこそこ適当に「クリエイティヴ」な会社に何の疑いも持たず就職していってしまうわけだけどね。まあ、そこでサラリーマンをやってみればいい。

 2. そういえば、オープンキャンパスが終わった後、別の学生が訪ねてきて、「私たちは餅つきをやろうと企画したのですが、せんべいの真似だし、暑いから食べ物はどうだろうと言われて、そうだなと止めることにしたんです」と言う。「やったら良かったじゃん」と答えた。ただ、確かに餅つきだけでは芸がなさすぎる。IAMASの「手打ちうどん」でもそう思ったが、「何をやるか」(コンテンツ)ばかりに目が行き、「どうやるか」(プロセスとメディア)に目がいかない。何しろ世の中が「コンテンツ」流行りだからね。ぼくは、一貫して「コンテンツ」志向の奴ほど「中身がない」奴だと主張し続けている。大学祭が嫌いなのは、やきそばやお好み焼きやラーメンなどを作って「意外とうまい」と言われて儲かることだけを目的にしている奴らばかりだからだ。「食べる」ということをもっとつきつめて考えればいいじゃないか。たとえば、みんなで可愛い子豚と遊んだ後で、そいつを殺害して丸焼きにして食べるとか、地鶏のヴィデオを作って感情移入させまくったあげく、みんなの前でそいつの首をねじ切り、鳥鍋にしてみんなで涙を流しながら食べるとか、商売でやっている人にはけっしてできないような形で、食べるという行為を感動に変えることだってできるじゃないか? 手打ちうどんについてもいろいろな助言をしたけど、どうだったのだろうか? 

 3. 「ホワイトバンド」や「ライブエイド」などの「慈善事業」や「ボランティア活動」に文句をつけると、すぐに「それでもそれで一人でも助かる人がいるならいいじゃないですか?」とか、「何もしなければ世界は変わらないじゃないですか?」とか、「こういうことの積み重ねで世界はもっと良くなるのではないですか?」とか言われる。アムネスティそのものが、新聞記事で見た見知らぬ外国の政治犯を救出しようというイギリスの弁護士の活動から始まっている。その後は、いろいろな利権にまみれた機関から活動資金を得て広がっている。新聞で見た、テレビで見たということから、地球の裏側に住む人たちを救出したいという素朴な衝動が、政治的に組織され「善意」が抽象化され商品化されていくのは醜いと思う。それ以外に、悲惨な状況に置かれている人たちを救う手段はないのだから、募金すればいくらかでも世界が変わるのではないかというような期待には、残念ながら何の根拠もない。どうすることもできない悲惨な世界を「知ろうとする」ことからしか、何も始まらないのだ。もちろん、個別のケースについてまで否定しようとしているわけではない。自分たちもバッタの時にはずいぶん募金者や善意の協力者たちに助けてもらった。だが、それはあくまでも個別の関係なのだ。協力してくれた人たちもまた自分たちの欲望から協力してくれたのだから、対等の関係だと思っている。だが、メディアを通した「募金」や「署名運動」となると話は別だ。「ホワイトバンド」は、駅前で偽の募金を募るいかがわしい団体や、寄付金を集める宗教団体と全く同じ仕組みのものだ。「赤い羽根」もそうだけどね。ああいう「免罪符」を身につけて何かいいことをしていると思いこんでいる人たちはいったい何を考えているのだろう。子供たちに「赤い羽根」を売らせるような(そういえぱ、ぼくも昔売らされたなあ)政治的仕組みの底に隠されているメカニズムが何なのか、そういう人たちはけっして考えようともしない。

« やるせない | トップページ | あれれ »

「大学」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/16230/5348622

この記事へのトラックバック一覧です: 補足するなら‥‥:

» [日々雑記]ホワイトバンドについて考えた [現実問題としてブラブラしている時間はあまりないんだけどブラブラしてるのが好きです。]
・丸の内の丸善に行ったら「ホワイトバンド」が山積みにされていました。世間に疎いもんで存在自体全然知りませんでしたよホワイトバンド。 ・検索して公式サイト([http://www.hottokenai.jp/home.html:title=こちら])を探して見てみた。「ほっとけない、世界のまずしさ」だそうです。すごく大雑把にまとめると、貧困克服は善意の寄付とかに頼っても焼け石に水なんで政策提言をする、というプロジェクトらしいです。 ・でもサイトを見ているといろいろと疑問や疑念がわきました。主なものは以... [続きを読む]

» ホワイトバンド、ぁゃLぃ [歯車スパイラル]
俺よりはるかに優秀な人も追試にかかってると聞いて、正直安心。 「おれも」という3文字がどんな慰めよりも効果的。 こんにちは、歯車師です。 ホワイトバンドですか?イカリングみたいな、ちょいダセーあれ。 それをしてる人とか見たり、実際に買ったとかいう人のブログ読..... [続きを読む]

« やるせない | トップページ | あれれ »

最近のトラックバック

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31