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2005.09.10

この三日間のこと

 8日は新国立劇場のCリハーサル室で行われている唐ゼミ★の稽古を初めて見に行く。岩波の樋口さんと「教室を路地に!−横浜国大VS紅テント、2739日」の図版や表紙デザインの打ち合わせ。新国立劇場の内部は無駄に巨大で、セキュリティも過剰に監視的で、美術館や自治体の文化会館など普通の文化行政機関の数倍以上権力的で陰険で息苦しい空間だ。あらゆるところに管理と監視が行き届いており、そのことが文化や表現の首を絞め窒息させる行為だということに誰も気づかない。あるいは文化というものが国家や法律に従属するものでなくてはならないという、抑圧的なイデオロギーが細部まで行き届いているような空間だ。こんな「文化衛生」的で墓のような場所では絶対に人は輝くことはできない。機械と歯車になるだけだ。
 新国のスタッフが押し付けてくるさまざまな規則やルールや注文(利用規則、消防関係の規制、客席の規制‥‥)などが、どんどん余分の仕事や打ち合わせを生み出し、表現のパワーと野蛮さを削いでいく。彼らは公演がうまく行くようにサポートしているつもりなのだが、全くサポートになっていないことに気づいていない(し気づくことはないだろう)。予算を取ってくるとか、トラブルを未然に防ぐとか、関係部署や外部の人たちとうまく結びつけて行くとか、彼らが「公演を成功させる」ためだと考えていることが、実はことごとく表現のパワーや強度を弱めさせ、窒息させてしまうということが分かっていない。それに結局のところは、「何かあってクレームがついた時に責任を回避する」という目的が一番優先されているのだ。仕方ないことではあるが、こうした巨大な官僚機構の中に人質にされたような彼らの舞台稽古はややスケール感がそがれて小さく見えた。c2
 権威とは建物や劇場装置だけではなく、それを運営する人たちも含めた空間全体のことなのだ。オペラやダンスなどの稽古やリハーサルも行われている巨大なリハーサル・フロアの中で、彼らはまるで大会社に就職したての新入社員のように、少し縮こまっているように見えた。新国立にとっては、これからも延々と続いていく小劇場公演のひとつにすぎないが、彼らにとっては後がない命がけの勝負でなければならない。比喩でも何でもなく、新国立を破壊し、その空間をぶちこわすことができなければ彼らには未来がない。それが嫌ならば元々テントでやらせてくれればいいのだ。あの抑圧的でどうしようもない「小劇場」という空間でやらなくてはならないだけでどうしようもないのに、さらに様々な規制や規則や妥協を強いられるのでは、出せる力の出しようがないではないか? 「暴れる」とか「刺客」とか言うのは比喩でも何でもない。鉄条網を敷き詰め、花火をばんばん破裂させ、床をごみや蒔き散らされる水で埋めるくらいでなければ、テントでの表現に拮抗できる表現それ自体が成立しないということだってあるのだ。一見親切にケアをしてくれているように見える新国立の体制に感謝して、規則を守る良い子たちでいたのでは、絶対に勝つことはできない。彼らにいま必要なのは過剰な野蛮さと暴力性である。人には向き不向きがあるから喧嘩したり暴れたりしろと言うわけではない。礼儀正しく毅然としたやり方でも相手をぎりぎりまで追いつめることができる。これは本番になって急に出せるものではない。今のところは新国立側のいろいろな注文や要請に彼らが対応に追われている。これは逆ではならない。どんどん無理な注文を出して、どこまでやれるかを妥協することなく探らなくてはならない。どこで引くかというライン取りが重要なのだが、今のところ押し込まれすぎているように思えた。そういう意味では今後の二週間と劇場入りしてからが本当の戦いになるだろう。
 9日はアートンの編集者・米倉さんと営業の禹さんの三人で、「巨大バッタの奇蹟」の売り込みのために横浜の何か所かを回る(ようやくアマゾンに掲載されたはいいが、発売前から「在庫切れ」って何?)。言うまでもなくバッタを知っている人には好評なのだが、新しい出版社で取次との関係が弱いアートンでは、書店の売り場担当者回りをしないとなかなか本を置いてもらえないようで、これまでのところ苦戦しているらしい。有隣堂のような横浜地元の本屋ですらも反応が悪く、要するに「売れない現代美術本」扱いをされてしまうらしい。書いた僕としては「売りたい」といよりもとにかく1人でも多くの人に「読んでもらいたい」。それが、一部の書店や、店の奥の方の「現代美術」コーナーに一・二部しか並ばないのでは浮かばれない。というわけで、どんどん宣伝をして下さい。市役所の売店や横浜市のグッズ置き場、Bakartのショップ、インターコンチの売店とか美術館とかいろいろ回ったが、とにかく話題になって本屋の一般書棚に平積みされるようになってほしい。既に、見本刷りやゲラを送った人たちからは「面白すぎる」という熱心な励ましが届いている。来週始めには出版されるが、是非書店で手に取ってみてほしいと思う。そういえば、アートンの特集ページにはメイキング映像が掲載された。今後中身もどんどん変わって行く予定である。
 そして、今日10日は唐ゼミ★が留守中ずっとワゴン車を借りていた新宿梁山泊が一月半にも及ぶ韓国テントツアーを終えて帰国した。車を返しに行く中野、椎野、禿たちと一緒に成田まで出迎えに行く。みんな大量の荷物を抱えて、日焼けしていたがとても元気そうだった。あれだけのツアーを成功させた充実感が表情ににじみでている。帰ったら帰ったでいろいろ大変だろうが、とりあえずは自宅でゆっくりと身体を休めてほしいと思う。でも、本当に凄いツアーを無事に成し遂げることができて良かったですね。大久保鷹さんが全く疲れを見せず元気だった。凄い60代だ。
ryozanpaku

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