« 短めに | トップページ | いそがしい‥‥ »

2005.10.10

ついに千秋楽終了

 27日から続いた唐ゼミ★新国立劇場公演「黒いチューリップ/盲導犬」日替り公演がついに終了した。10月3日の休演を除けば、2日の追加公演を入れて全部で「黒いチューリップ」6回、椎野版「盲導犬」4回、禿版「盲導犬」3回の計13回公演を行ったことになる。その間、演劇評論家、メディア、友人たち、卒業生たちなど沢山の観客が観てくれた。朝日新聞、読売新聞にも劇評が出たし、関連記事も多数出た。これはひとつにはぼくが岩波の「図書」10月号に書いたように、唐十郎作品がこの秋集中砲火的に上演されるということもあり、唐ゼミ★の公演はその斬込隊的な役割をもっていたこともある。10月8日付の「日刊スポーツ」にも唐さんの全面インタヴューも出ていたし、インターネットのチケット予約サイト「e+」にも「唐十郎祭」という特集ページが出ている
 こんなに長い時間をかけて準備をしたのも、こんなに連続で公演をしたのも彼らにとっては初めてで、まずはそれをやりきった中野敦之、椎野裕美子を初めとする唐ゼミ★の連中の気迫と集中力を賞賛したい。個々人によってその捉え方や姿勢に違いがあるとは言え、このきつい巡礼行についてきた年少のメンバーも頑張った。ある意味では学生のままで新国立劇場の舞台に立つことができるばかりではなく、新聞や雑誌などに取り上げられるというのは、苦労知らずで育った促成栽培の野菜みたいに見えるかもしれないが、岩波の『教室から路地に!』に書いたような四年間の軌跡が彼らをここまで引き上げてきたのである。「豚もおだてりゃ木に登る」ではないが、生き物としての人間のもっている力を引き出す場所をいかにして作り上げるかということで言えば、ここから彼らがどこに飛び出していくのか(全く分からないが)が楽しみだ。ちなみに彼らがこれからどんな形でどんなことをやっていくのかは現時点では誰も分からない。
 ぼく自身も劇場入りから三週間近くほとんど毎日つきあった。ぼくがもう必要ないと思われることも多々あったし、手伝うことがまだまだあると思われる時もあった。そうした中で観に来てくれた様々な人たちや、とりわけかつて唐ゼミ★やぼくと関わった卒業生たちと再会したことが個人的には印象深かった。仕事を頻繁に変わったり、辞めてしまったりしている者も多く、日頃就職率ばかり重視しているような大学の現状に反発していることが多いのだが、余りに大学が面白すぎても、社会に出てから適応できないことになるのではないかと反省もした。大学の場合短期間である程度のポジションにつくことができるが、社会では時間がかかる。三年、五年と我慢して初めて自分の力が生かせることもあるだろうに、割と早く見切りをつけてしまうようで、必ずしもぼくのせいとは思わないが少しそういうことも考えなくてはならないかと思った。
 連日、朝帰りで5時間以下しか寝ていないせいでかなりダイエット効果があった。唐組の秋公演「カーテン」も8日に開幕し、9日には昼の「黒いチューリップ」最終公演と夜の「カーテン」を梯子する観客も多かった。ぼくにとっても楽しく充実した日々だったがそのせいでいろいろと別の仕事の方が逼迫している。
 10日は慶応大学三田キャンパスで開かれている美学会全国大会にちょっとだけ顔を出す。なぜか余り書店には並んでいないのでアマゾンで取り寄せたベスト新書の『禁煙ファシズムと戦う』を読む。斎藤貴男氏の「禁煙ファシズムの狂気」というルポと、巻末のジェイムズ・エンスローム論文の紹介は秀逸だった。これはきわめて証拠不足の病理学や予防医学の研究ばかりではなく、疫学的統計やコホート調査においても「受動喫煙」なるものが完全に「嘘」であることを教えてくれるカリフォルニア大学調査の概要である。また、福田恆存や山崎正和による過去の反嫌煙論が紹介されているのも面白い。小谷野敦氏の文章はやや神経症的ではあるが、劇場施設の禁煙という行き過ぎや屋外禁煙という千代田区の狂気に対する批判の部分には共感できる。この問題、ネットで書くとあまりにバカばっかり集まって来るので、しばらくタバコの話題はやめようかと思ったが、やはりこの問題は引き続き考えていこうと思う。タバコ問題が現代の人間の批判能力の欠落とシステム依存症の象徴であり、小谷野の言うように「禁煙運動家はバカか無責任か嘘つきなのである」としても、どうしてそういう存在を多数生み出して行ったのかということをタバコ問題を超えて問題にしていかなくてはならないと思った。そういう意味ではこの本は存在価値があるし評価できる。うちの大学内でもますます圧力が加わってくるだろうし、具体的に身近なところから戦っていくことにしたい。

« 短めに | トップページ | いそがしい‥‥ »

「Non Section」カテゴリの記事

「唐ゼミ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/16230/6344971

この記事へのトラックバック一覧です: ついに千秋楽終了:

« 短めに | トップページ | いそがしい‥‥ »

最近のトラックバック

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30