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2005.11.06

KaraComplex「調教-師」

 シアターコクーンの「調教-師」初日に顔を出す。
 「調教-師」は元々同名の小説として78年に発表され、戯曲化されたものが状況劇場の稽古場公演などで上演されていた。佐野史郎や六平直政らの時代だ。新宿梁山泊の金守珍が初めて演出をした作品でもあると言う。そういうこともあって、新宿梁山泊でもこの未発表戯曲「調教-師」は稽古場公演として何度も上演されたことがあったらしい。それを新たに手を加えたものが91年に劇団唐組が上演した「透明人間」である。単行本も出ている。元々の小説にはなかった「モモ似」というもう1人の女性や、白川先生とマサヤ少年という新しいキャラクターが加わって演劇的な広がりを増している。唐組では1998年に久保井研が稽古場公演用に演出したものが素晴らしく、東京と水戸で特別公演のような形で上演された。鳥山昌克の「合田」と稲荷卓央の「辻」、堀本能礼の「田口」などのキャストも素晴らしかった。 さらに、2001年秋、タイトルを「水中花」に変えて上演されたが、この時は稲荷、堀本を欠き、高橋祐也ら新人を起用した緊迫感のある公演だった。この時の印象は「巨大バッタの奇蹟」の中にも書いている。
 タイトルを小説通りの「調教-師」に戻してはいるが、今回の作品はこの「透明人間=水中花」である。恐水病(狂犬病)の犬の噂をめぐって、人と犬、過去と現在、中国大陸と日本の幻影がゆらめく水を通して溶け合い、生命の源流としての水の中へ世界が丸ごと飲み込まれて行くような、90年代における唐十郎の代表作のひとつだ。
 その作品に南河内万歳一座の内藤裕敬が挑戦している。プロデュースはRUP。つかこうへい事務所に居た菅野重郎さんが、小劇場の名作をメインストリートに送り込もうという情熱で作ったプロダクションだ。これまでも、SMAPによる「蒲田行進曲」など、タレントの集客力を利用して商業演劇の世界に小劇場演劇を根付かせようとしている。今回も、椎名桔平、萩原聖人、窪塚俊介、黒木-メイサらを起用し、木野花、内藤の南河内から荒谷清水らの劇団員、峰村リエら小劇場系の役者たちが脇を固める。ともすると商業主義とも取られかねないこうした形態は、唐さんと目指す方向性がかなり異なっており、企画の段階でもさまざまな衝突があった。それらを乗り越えての初日である。菅野さんは、岩波の「教室から路地に!」を発売直後に読んでくれていて、向こうからぼくに話しかけてくれて、何度か飲み会の席でお話ししたが、その志においてはきわめて純粋で情熱的な人物である。いつしかこの公演の成功を祈るようになった。劇場で売っているプログラムにも唐さんとぼくの対談が掲載されているし、唐ゼミ★の中野の文章も入っている。
 「調教-師」(「透明人間」)は、コップの中の水中花など小さなブツが重要な芝居で、シアターコクーンという大きなハコとはそぐわないかとも思われたが、舞台装置は絶妙の遠近法で作られており、回り舞台と舞台下手の水槽に屋根からつながる雨樋が印象的な空間が作られていた。主演の椎名桔平は少し声を潰していたが、萩原聖人はなかなか素晴らしく、正攻法で正面からぶつかる内藤演出によって戯曲の世界をほぼ正確に伝える舞台となっていた。これから15日間の公演を通してさらに練り上げられて行くに違いない。
 初日ということで客席はほぼ満員。小田島雄志、長谷部浩、西堂行人、大笹吉雄さんたちも顔を見せている。南河内の鴨鈴女さんや奈良さんとも顔を合わせた。終わった後、唐ゼミ★の中野と椎野、唐組の藤井由紀、真名子美佳らと打ち上げの席に。出演者スタッフの皆さんとの乾杯につきあう。唐さんも喜んでいた。ぼくとしては唐十郎作品のあり方として、こういう形が必ずしも最良とは思わないが、それでも初の試みとして是非成功して欲しいと願っている。
 写真は、左から内藤裕敬、唐十郎、中野敦之、黒-木メイサ(17歳!らしい)、木野花という世代を越えた集合写真である。無事に初日を乗り越えたという喜びと安堵感が表情によく出ている。chokyoshi

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コメント

お返事ありがとうございました。唐ファンの方にも、調教師を見られた方の感想が掲載されて、また違った感想を読めて良かったと思っております。唐ゼミのお芝居では本当に楽しませて頂きました。あそこまで情熱的にしかし過激に自己表現もされて唐十郎を表現出来たのは横国に唐さんを招いて下さったおかげだと思っています。唐さんが横国に与えたものも多大だったかもしれませんが、唐さんが横国から得たエネルギーと情熱も多大だったと思います。横国での記録も拝読させて頂きます。劇団唐ゼミの今後の活動も目が離せません。

エスロビンさん、いらっしゃい。
ちゃんとどなたか把握しております。唐ゼミ★のご支援ありがとうございます。今年の唐組でも二度程お見かけいたしましたね。
「調教師」は18日にまた観に行きましたが、出演者の皆さんは声がつぶれ気味でしたが演出も台詞のテンポも見違える程良くなっていて感動しました。内藤さん自身もひとつこれで皮が剥けたのではないでしょうか? 明日が楽日ですのでまた行きます。但し、シアターコクーンという大きなハコに向いていないことは事実ですし、キャスティングも唐組の面々には及ばないのも確かですね。鳥山君の合田だったらなあとか、稲荷君の辻だったらなあとかつい思ってしまいます。

はじめまして、エスロビンと申します
「調教師」の感想、楽しく読ませて頂きました。僕は時間の調整がつかなくて見に行けなかったのですが、背景とか読み見たかったなあと思いました。唐さんの世界をどのように描いていたのか・・です。

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