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2007年4月

2007.04.27

日本記号学会米沢大会とバッタ公開

まずは、日本記号学会の米沢大会のプログラムが決まった。写真をテーマにした興味深いセッションになりますので、学会員以外の方も是非参加して下さい。米沢、面白そうです。「写真の語りにくさ」というのがテーマになるはずです。

それから5月3日から6日まで半年ぶりにバッタの地上置き公開があります。筑波エクスプレスの新駅、柏の葉キャンパスでの企画。ララポート柏が既にオープンしているので、かなりの人手が予想されます。3日には椿昇と一緒に参加します。但し当然のことながら雨や風が強い日には中止になりますので天気予報を見てからお出かけ下さい。これは、予想を遥かに超えて一見の価値はありますし、面白いですよ。

29日には大阪の唐組公演「行商人ネモ」に出かけています。

2007.04.21

「愛の乞食」終了。やっぱり若さって凄い!

 三日間限定の学内公演。悪天候がずっと続き、ゲネプロの時も初日の本番も、テントの天井を叩く大粒の雨と骨まで染みてくる寒さに苦しめられた。

 それでも初日から100人を超える観客が入り、二日目、三日目は140、150とどんどん膨らんでいった。ほとんどが学生客だが、パラパラと大人の観客も入り交じる。初日には朝日新聞社の近藤さん、二日目は『教室を路地に!』の編集者・樋口さんたちが来て楽しんでくれた。

 こういう学生による演劇の場合ありがちなことだが、客が入る本番になると大きく化けていく。稽古の時とは見違える程、スピード感と気迫に満ちたいい舞台ができあがった。見る側も演劇経験が乏しく、ある意味では汚染されていない観客たち。役者の熱演と、テントならではの仕掛けにぐっと引き込まれて息づかいが変わるのがびんびん伝わってくる。屋台崩しで海賊船が現れると、首を伸ばし、背中を傾け、去っていく万寿シャゲの行方を見届けようとする観客たちからは、まだエンディングの音楽の鳴り響く途中から拍手が自然発生的に生まれ、海鳴りのような拍手の音の中でのカーテンコール。外ではカンパ箱に千円札から、小銭入れを引っくり返して一円や五円玉まで混ざった硬貨がどんどん増えて行き、雨にもかかわらず興奮した観客たちはなかなかその場から立ち去らない。大雨の中、そんな幸福な初日を迎えることができた。

 二日目からは天気予報が変わって晴れになると聞いて、彼らのテンションは上がりっ放しになる。傑作であることが間違いのない台本と、綿密に練られた演出プラン、照明や音響、舞台美術などのスタッフワークには支えられていても、本番は間違いなく役者たちのものだ。彼らの異常にまで燃え盛った熱が、舞台の上から確実に伝わってくる。始める前のミーティングで危惧された通り、やや空回りして台詞が飛んだりするミスも出たが、それも彼らの勢いで飛び越えて行ってしまう。

 そして、最終日。天気も良く、この公演をとても楽しみであると同時に不安にも思っていた唐十郎と久保井研がやってきた。劇団唐組は照明稽古を終えて大阪に向かう荷積み中の忙しい時期である。唐さんはいつものようにそわそわと色んな質問をしてくるし、久保井君は早速裏に回り、舞台裏の状態をチェックする。

 結果として三日間の中で一番の出来だったと思う。観客も立ち見が出るまで膨れ上がり、終わった後もいつまでも帰らないままテントの前で興奮してしゃべっていた。唐さんもカーテンコールに登場し、出演者の何人かは泣き出すし、終わった後のテントでの宴会でも興奮冷めやらぬ感じであった。顔がぴかぴかしている。山崎雄太が「是非ぼくにやらせて下さい」と言ってきてから約2ヶ月間、「ドラクエ」のように旅の仲間を一人一人増やしながらここまでたどりついた達成感は何ものにも代え難いだろう。まちがいなく彼らにとって「一生忘れられない出来事」になったことにちがいない。

 仕掛人としてのぼくや唐ゼミ☆の中野敦之にとってもこの成功はとてもうれしいものだった。唐ゼミ☆のメンバーも入れ替わりで見て行ったが、弟分たちの熱演に刺激され、多少は嫉妬も感じたに違いない。きっとこれが、次回の「鐵假面」に跳ね返って行くことだろう。初期のメンバーたちはどうしても、2002年に彼らが最初に赤テントを立てた「ジョン・シルバー」や「動物園の消える日」の時のことを重ね合わせてしまうようだ。ぼく自身も、教室棟の前に立つ青テントを見ると、同時に目の奥には「ジョン・シルバー」の赤テントが重ね合ってきてしまう。5年経って、また同じような感動を与えてくれた山崎たちには本当に感謝している。

 唐十郎は本当に感動して涙まで浮かべて喜んでくれた。車で高円寺の大和町に移ってからも、ずっと役者のことや演出家のことを熱をこめて話し続けていた。最近見た芝居の中でも一番面白いとまで言ってくれた。いつものことだが、どうして唐さんはそういう感性を持ち続けていられるのだろうと不思議に思う。自分の作品だから、というのではない。この山崎組の芝居にはあって、他の劇団にはないもの、というものに唐さんはいつも敏感なのだ。だからこそ、唐ゼミ☆だってこうやって続けていくことができたのだ。もちろん欠点はある。演出に対してもいくつかの疑問は残る。だが、そんなことを飛び越えて、この公演がめったに見られない凄いものであったことを、ぼくは確信しているし、その確信を唐さんは裏付けてくれる。そこが唐十郎の凄いところだし、逆に普通の演劇人にはめったにないところなのではないかと思う。

 唐ゼミ☆の新国立公演の時に、少数ではあるが評論家に「役者の技術が全然なっていなくて、水準に達していない」というようなことを言われて腹が立って仕方なかった。どこを見ているのかと思った。確かに、演劇には前にも書いたようにいくつもの層があって、評価軸の取り方は多様である。正直、山崎組を見に来てくれた何人かの大人にも役者の技量不足や装置の不完全さを指摘され、「台本がいいから楽しめたけど、流石にこれで入場料は取れないよね」というようなことを言われた。ところが、唐さんはストレートに「普通に入場料は取れるよ、だってこんなに凄いんだから」と言ってくれる。多分、非常識なのであろうが、それでもそう断言する唐さんは凄い。周囲にいるぼくたちはずっと立ち会っているのだから、見る時にいろいろな情報がプラスされている。技量不足や段取りの悪さには慣れっこになっていて余り気にならなくなっているかもしれない。だが、唐さんはそんなことに関係なく、初めて観ても一目でこの舞台の素晴らしさを見抜いてしまう。それは、地べたと布だけの装置に作業灯の照明だけでやっていた初期の状況劇場から一貫している美学なのではないかと思う。どうでもいいことと、どうでもよくないことの見極め方がとても早くて正確なのだ。そうでない人はどうでもいいことの方ばかり気にしてしまうのであろう。

 実際、ぼく自身もこれは相当凄いイベントだったと思う。学生がやっているから、大学の学内公演であるから、入場料無料であるから‥‥というようなこととは全く無関係に、こんな凄いイベントを一緒に作ることができたことを誇りに思うし、多分、他の劇団や他の大学演劇科では絶対にできないことなのではないかと思う。それは唐さんを大学に呼んでから10年かけて作り上げられて来たこの大学の文化環境なしにはありえなかったのではないかと、多少まあ自画自賛ではあるが、でもきっとそうなのである。

 写真は劇団唐ゼミ☆から転載。070420_1

2007.04.14

「ジョン・シルバー 愛の乞食」

海賊版舞台芸術論・山崎組
『ジョン・シルバー 愛の乞食』

日時 : 4月18日(水)、19日(木)、20日(金)
時間 : 開演 18時半 (18時開場)
場所 : 横浜国立大学教育人間科学部
    8号館裏原っぱ特設青テント
料金 : 入場料無料
詳しくは唐ゼミ☆サイトへ。

 これはイケるかもしれない。もうそう書いても大丈夫だろう。

 久保井授業の試演会がきっかけで始まったこの企画。実際には授業に出ていた者は二人しか残っておらず、後は唐ゼミ☆の山崎雄太がひとりひとり声をかけて集めてきた、異常にキャラが立っている普通の学生たち。舞台に立つのはほとんどが初めての経験である。主役の田口は山崎が自分で奪い取った。

 唐ゼミ☆の協力でテントが立ち、毎日雨風の中、夜昼なく働き、稽古をし、テントを守る。顔つきが変わってきた。こういうのに立ち会っているのがとても面白い。テントは確かに人を育てるのである。

 通し稽古を見る度に全く変わってくる。まるで昆虫の変態を見ているみたいで、三日前とは全く違う舞台を見ていると、本番でどこまで行けるのかがとても楽しみになる。

 今日は久しぶりに大学に顔を出した椎野裕美子と一緒に、彼らがこの二三日、徹夜で作っていてエンディングの決め手になるある「ブツ」を見せてもらう。椎野がこの「ブツ」に乗ってポーズを決めてみると、予想を遥かに超えて超いい感じ。実際には違う万寿シャゲが乗るのだけど、これはかなりイケそうな予感。その傍らではやはり兄貴分の安達俊信がシルバーの肩に乗るオウムの「フリント船長」を徹夜で作ってやっている。これも「やり過ぎ」なくらいにいい。唐ゼミ☆が初めて『腰巻お仙』をやった時のことや最初にこの場所にボロボロの赤テントを立てて『ジョン・シルバー』をやった時のことを思わず思い出してしまう。横浜国大のヒュルヒュル風吹く丘の上のテント——これに立ち会えるのはとても貴重な体験になるかもしれない。平日の大学構内での公演だけど、外からも是非見に来て欲しいところだ。

 海賊版でも「授業」と銘打っている建前、入場料は取れないが、もう既に彼らの持ち出しの金額がだいぶ膨らんできています。投げ銭やおひねり、カンパ、差し入れは大歓迎。面白かったら是非、じゃらじゃら百円硬貨でも渡してやって下さい。涙ぐましいです。

 名残桜と春の夜風、丘の上に翻るテント、若い学生たちの持つ新学期独特の臭い、そして何と言っても唐十郎作品中でも屈指の超名作! 役者の技量不足を差し引いてもおつりが来る程、エンディングは心に突き刺さってくるでしょう。そして、技量不足でもあの生の素材があれば十分楽しめますし、何と言ってもエンディングで出て来るあの「ブツ」があれば絶対無敵! 伝説になるような公演になると思っています。

 てなわけで、新学期一週間のいろいろあった疲れも吹っ飛ぶほど、教室棟前の「はらっぱ」では熱い血潮が沸騰しています。

2007.04.10

新学期とガイダンス

 まあ、毎年のことではある。
 だんだん始まる時期が早くなって、今年は4日が在学生のガイダンス。

 GPA(グレードポイント・アヴェレージ)とか、卒業研究着手資格が100単位とか(これに達していないと自動的に留年が決まる)とか、語学の履修方法に関する細かい規則とか(これを間違えると卒業できると思い込んでいた者が、直前になって卒業できないと慌てふためくことになる)、とにかく面倒くさいことが多すぎる。これらを作った人は学生の「やる気」を鼓舞しようとしたのだろうが、実際には「やる気」が極端になくなってしまう元凶になっている。

 言うまでもなく大学において「単位」はただの「口実」であって、「目的」ではない。だからこそ、単位の「実質化」などというわけのわからないスローガンが出て来るのだろう。ところが、学生も教員もこの「単位」を「実体」と取り違えてしまいがちである。「単位」が「口実」であり、「虚構」であるといま言ったが、それでは大学において「口実」でも「虚構」でもないものとは何か? これが分からなくなってしまっているからこそ、「単位」に必要以上の意味と重要性を与えようとするのであろう。まさしくフェティシズムである。

 まあ、何を言っているのか分からない人もいるだろうが、要するに成績表とかゼミ選択とかを巡って、またしても何人かの学生と何人かの教員とのぶつかり合いがあったということである。制度というのは人が生きやすくなるためのものであるはずなのに、壁になって立ちふさがり、人を押しつぶすことが多すぎる。また、そのことを仕方ないと簡単に諦めてしまう人や、自分の権力を行使するためにそれに便乗しようと思う人も多すぎる。

 6日は新入生のガイダンス。年々新入生の顔が高校生化してくる。年々子供っぽくなっていくという意味だ。余り背伸びしようとしたり、目立とうとしたりしようとはしない。こっちも一年ずつ年を喰っているので、年々子供っぽくなる一年生とつき合うのは苦しい。恒例の歓迎BBQだが、例年になく手際の悪い準備態勢の上、徹夜続きとは言えリーダーが寝坊してしまったためにばたばたしていた。一番頭が悪かったのは、肉の安売りスーパーで業務用の大袋の冷凍肉を前日に買っておいて風呂で解凍するんだよと教えておいたのに、本番二時間前に買った肉を解凍しようとしていたこと。「肉はどうした?」「いま近くの奴のアパートで75度のお湯で解凍中です」。75度では表面が「茹で肉」になってしまうだろうし、第一間に合わない。まあ、しかしそれでも何とかはなったようだ。

 7日は日本記号学会の理事会。新体制ということで、6年間務めた会長を退き、菅野盾樹さんに新会長になってもらうことになった。何とか新しい風を巻き起こしていただきたい。ところで、米沢での大会は5月12日13日の両日、写真をテーマにして開催される。こちらの方も詳細が近日発表されるがなかなか面白くなりそうだ。

 「海賊版舞台芸術論・山﨑組」の『ジョン・シルバー 愛の乞食』の方は、土曜日に青テントが立った。唐ゼミ☆の「鐵假面」用のリハーサルも兼ねて、これまでとは違った建て方をしていてなかなか美しい。ここで、経験も実力もまだまだ伴わない学生たちがどんな事件を巻き起こすことができるのか、とても楽しみだ。

 さあて、明日からは授業が始まる。

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