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2007.07.18

池袋西口公園での「鐵假面」終了

 この公園に毎日やってくる、ホームレス、外国人労働者、高校生、大学生、チーマー、やくざ、酔っぱらい、他に行き場所のない人たちの群れに囲まれ、金曜のゲネプロ時には、ステージで宴会をしていた酔っぱらいに何度も「オメーラ、ウルセー」と怒鳴り込まれたり、終わり際にコンパ帰りで盛り上がりたい大学生30人以上に囲まれたりと、果たしてこんなところで公演が打てるのかと危ぶまれた池袋公演であったが、四日間無事に終了した。ゲネプロの日には中野と二人で電車で帰りながら、「もうこんなところで芝居はやらない方がいいよ」と言ったものだが、終わってみるとなかなか感慨深い。最初はここの住民の異様さに完全に引いていたメンバーたちもみんな達成感と、この場所や人々への愛着のようなものが出て来たようなのが面白い。何よりもエンディングでは他の場所では絶対に味わえない感動を体験することができた。無事に終われた達成感も大きい。

 初日は金曜日。この日は普通のウィークエンドで酔っぱらいが多く、ピリピリした雰囲気の中、役者たちもやや外の群衆に押された感じで固くなっていた。2日目は台風の影響で一日中大雨。トイレで喧嘩があり、警官が出動する騒ぎはあったものの芝居には集中することができたが、雨の音に対抗して喉を痛める者が続出。それでもエンディングの時には小降りになってくれて助かった。3日目は台風直撃の予報の中、南に逸れてくれたおかげでこれまた無事に。唐さんや、唐組の鳥山君が心配して駆けつけてくれたが、やや拍子抜けの感じだった。とは言え、安心していたら夜になると意外に風が強く、台風の雰囲気は充分以上味わわせてもらえた。4日目。当日客がどんどん増えてやはり大入り満員。幸せな楽日を迎えられた。これで終わってしまうのが名残惜しいくらいであった。この間、ぼくはずっと公園に居たり、お世話になった望月六郎監督がやっているDogaDogaプラスの「贋作・春琴抄」や南河内万歳一座の「滅裂博士」などに顔を出したりしていてなかなか忙しかった。

 当日に来てくれる観客も多く、結局初日以外はすべて立ち見の出る大入り満員。京都や新潟、水戸からもいろんな人が来てくれたし、この作品に強い思い入れをもつ旧状況劇場の面々、とりわけ大久保鷹さんは三回も来てくれたし、堀切直人さん、扇田昭彦さん、高橋豊さんを初め唐さんにゆかりのある方々にも喜んでいただけたようで良かった。やはり、これは圧倒的に面白い作品なのである。

 唐十郎作品にしてはめずらしい硬質な思想劇、というか異化効果を組み込んだメタシアター的構成に戸惑われる方も多かったかもしれないが、(アンチ)ヒロインが軽薄で移り気な女で感情移入しにくい(できない)のも、畳屋の子供じみた妄想が常に裏切られるのも、母よりも昔の時代から生きていた紙芝居屋が「父」の名の下に「夢からさめろ!」と叫ぶのも、大衆の夢魔にうなされながらも、大衆の深層に想像的エネルギーの鉱脈を探し出そうとする彷徨からもたらされる必然なのである。一幕終わりに便所に現れる満州帰りの叔父の亡霊の象徴する歴史の悪夢と、二幕終わりの超速度でめまぐるしく展開する地獄巡りの5分間の中にすべてが凝縮されている。二幕の「鉄仮面裁判」から後の椎野裕美子はほぼ完璧にそれを演じきっている。今回の唐ゼミ☆の「鐵假面」は単なる心理劇やメロドラマには還元されえない非構造的な強度の演劇として成立していると思う。最後の五分間でスイ子も畳屋も、それまでの人物造形とは全く異なる別の生き物に生成=変化していかなくてはならないのだ。中野演出ではそれは花道と舞台の階段を結びつける垂直軸上の「道行き」、あるいは「オルフェウス神話」として見事に造形化されている。それは『吸血姫』のエンディングにもよく似ている。おそらく、今週末の関内公演で、エンディングはさらに形を変えてこれまでとは全く違ったものになっていくだろう。さらに、観客の一人一人が鐵假面という登場人物にほかならないということがもう少しくっきりと伝えられれば、ほぼ完成形に近づくと言っていいのではないだろうか?

 そういうわけで、残り2日の関内公演に是非それを確かめにきて欲しい。一度見ただけでは分からないことも多い筈です。

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