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2008.03.03

韓国版「盲導犬」公演

 26日、成田から韓国・全州に向かった。だいたい2005年の夏に初めて全州に行った時と同じようなスケジュール。とにかく全州は遠い。

 とは言え、仁川空港からの高速バスはソウルの中心部を避けて通るルートに変わっていて、渋滞もなく休憩も無く3時間ちょっとで到着してしまった。今回、携帯電話を持って行ったのだが、仁川では通話できたのに全州ではつながらない。なぜかメールだけは通じる。これは最後までずっとそうだった。夜になると流石に寒さが身にしみ、コアホテルのロビーに逃げ込み、メールで到着を伝えると椎野と韓国人キャストの一人が車でやってきた。車の中で立派なパンフレット兼ポスターとチケットを見せてもらった。彼らは全員でこのポスターを全州の町中に張りに行ったらしい。

 とりあえず歓迎会ということで、サムギョプサルを食べに町に出る。朴炳棹教授はみるからに体調が悪く、去年の初夏からずっと具合が悪いという。無理をせずに飲まないで早く寝てくれと言うが、この日のために体調を整えて来たのだから大丈夫となかなか帰らない。ぼくも今日は早く帰るからと言って11:00頃には終わらせたが、他のメンバーは照明稽古のためにまたホールに戻っていった。前日から、最初に日本に来た時のメンバーであり、現在はソリ文化センターの照明技師になっているキム・ドンファンが徹夜で照明の仕込みをしていて、結局全員で朝方まで照明稽古をすることになったらしい。翌朝、タクシーでホールに行くと日本組全員がまだ装置の手直しをしていた。中野が、あいつら軍隊に行っているといっても、全然根性ないですよ、と傲然と言い放つのがおかしい。そのまま10:00からはメイクさんが来て、三時間もかけて全員のメイクアップ、その間に弁当を取る。予定より遅れて3:00からゲネプロ。当然のように色々な問題が出てきて、6:30の開場時間ギリギリまで手直しに時間がかかった。

 ぼくはと言えば、春休み中で学生たちの姿がほとんど見えないキャンパスで、本当に客が来るのかどうかとじりじり外を見ていた。それは本番前にようやく顔を見せた朴炳棹も同じらしく、じりじりしながらロビーに立ち尽くしている。以前に日本にも来たなつかしい卒業生たちや、入学が決まったばかりの新入生、演劇科の先生たちや学部長らが顔を出してくれるが、400席ほどあるホールに70人程度しか集まらない。遅刻者を入れると100人弱にはなったようだが、それでも広いホールを埋めるには全然足りない。どうやら、日本も2月で年度が終わる韓国と同じで2月中にやらないと助成金が使えないと思っていたようだが、こんなことなら一、二週間伸ばしても良かったのにと思う。こんなことにも異文化コミュニケーションの難しさがあったわけだ。朴炳棹が元気がなかったにしろ、それにしても韓国人学生たちの制作能力の低さにも少し腹が立つ。分業システムが徹底していて、彼らは役者以外の仕事に全く関心もなければ、熱意ももたないのである。
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 芝居はと言えば、基本的には新国立劇場での唐ゼミのと同じだが、韓国語の台詞や韓国人俳優のきびきびした演技、日本とは色調の違う照明やメイクなど新鮮な感じがした。とりわけ、婦警サカリノ(韓国版ではヤシ)、タダハル役はとても良く、またパク・サンジュンのやった「先生」やフーテン少年もかなり頑張っていた。全体的にはかなり完成度が高かったのだが、リュウ・ソンモクのやった「破里夫」とパク・ダヨンの「銀杏」は少し重かったかもしれない。キャスティングは向こうの指定なので、二人ともとてもまじめに頑張ったのだが、やや彼らには荷が重かった部分もあった。また、擂り鉢形の幅と高さが大きなホールでの中野敦之の演出にもやや不慣れな部分が多く、とりわけエンディングの展開は少し厳しいところもあった。ただ、それは何度もこれを見ているぼくの感想であり、初めて見る観客たちはそれなりのインパクトを受けたようだ。終わった後、すぐにバラシに入る彼らを残して、大人のゲストだけで朴研究室で話をしたが、どの人も大きなインパクトを受けたようで、質問攻めにあった。また地元の新聞社の記者も来てくれて翌日大きな記事にもなった。さらに11過ぎに片付けを終えたメンバーと前回「ユニコン物語」を上演した大練習室で打上げ。みんな弾けまくっていた。この日もぼくが帰らないと朴炳棹が帰ろうとしないので、名残惜しく1:00にホテルに戻る。結局残った奴らは3:00から4:00、そのまま床で寝た者もいれば、最終居残り組は5:00過ぎまで飲んでいたらしい。
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 次の日は轟沈したメンバーを残し、中野と二人で名物のもやしクッパを食べに出て、中心部を散歩する。中野は食べ物に対する天才的な執着心を持っていて、前回ごちそうしてもらった全州一のビビンパ店を自力で見つけ出し、結局昼過ぎに起き出した日本人、韓国人合流組15人で再び全州ビビンパを食べる。ここの店は真鍮の器にいろいろな野菜が入った繊細で極上のビビンパを出してくれる。それを堪能したあと、王宮を見学し、全羅北道南部の春香のテーマパークへ。これは韓国に伝わる春香伝説の場所だったらしいが、要するに観光用のテーマパークだ。そこから戻るとまた朴炳棹のおごりで韓定食。余りに彼の調子が良くなさそうなので、帰るふりをして朴炳棹だけ家に帰して、また大練習室へ。そこで「盲導犬」のことや今回の舞台についてソンモクやダヨンと話し込む。彼らにとっても今回のイベントは大きな印象を残したことがわかり、やった意味があったと思った。
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 全州最終日はまたしてももやしクッパ。昨日とは違ったスタイルで更にうまい。そこから大学に戻り荷造りをし、朴炳棹研究室でお茶を飲んだ後、大学正門前から出るソウル行きのバスに乗る。三時間程でソウルのバスターミナルに着き、景福宮の近くにある大元旅館へ。ここは質素で格安な宿として有名だ。そこから中野とヨンソンは日韓演劇交流センターで翻訳をしている木村さんのやっている坂手洋治さんの芝居へ。

 残りのぼくたちは小劇場が沢山集まる大学路へと移動。手頃な演劇を探すが、結局インフォメーション・センターで勧められたゴムル・バンド・イヤギ(Junk Band Story)というミュージカル・ドラマを見に行く。これが思いがけず大ヒット。最初は150人程の地下ホールに30人程度しか客が居らずどうなることかと思ったが、時間を忘れるほど楽しくエキサイティングな時間を過ごした。韓国では「ナンタ」(台所ミュージカル)とか「ジャンプ」(格闘技コメディ)など超絶パフォーマンス系の舞台が人気だが、これはそれらとも少し違い、バンドコンテストに出場しようとする若者たちの話。メンバーはリズム音痴だったり音痴だったり、緊張症ですぐに下痢になったりとどうしようもない上に、お金がなくて楽器もない状態なのだが、その辺に捨てられている空き瓶やパイプを使ってコンテストで優勝するというような話。彼らはジャンク楽器や、口ドラム、口ギターなどを駆使して素晴らしい演奏をする。音響技術がすばらしく、後半はコンサートになるものの、きちんと芝居もでき、歌も踊りもすばらしく、すっかり引き込まれてしまう。演出家は「ナンタ」のメンバーだったそうだ。余りにすばらしくて終演後に表に出てきちんと挨拶をしている5人に話しかけると彼らも喜んでくれた。制作の人と話すと、日本語学科の出身らしく日本語も通じる。結局はこの公演に二日続けて行ってしまうことになる。

 ソウル最終日は椎野や禿と景福宮、仁寺洞、南大門、明洞、東大門など忙しく動き、6時に中野や他のメンバーと合流。中野もマチネーでJunkBandStoryを見ていたのだが、他の演目も検討した挙げ句に結局はもう一度これを見に行くことになる。今度はほぼ満員で上の方から見たのだが、メンバーに少し疲れが見え、観客のノリも少し重かったのだが、それでも十分満足できるできばえだった。またメンバーとしゃべり、プログラムにサインをしてもらい、写真を撮って帰る。これ、誰か日本に呼んでくれないかなあ。タイニイアリスとかスズナリとかなら絶対に大ヒットすると思うのだけれども。

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