« 七月から猛暑が止まらない。 | トップページ | 横浜トリエンナーレ2008開幕 »

2008.08.19

唐組秋公演は「ジャガーの眼2008」

 この時期恒例の山中湖乞食城での唐組稽古場公演。
 中野、椎野、禿と四人で車で出たのだが、お盆の渋滞で遅れそうになり、焦ってぎりぎりに到着する。

 「ジャガーの眼」は、85年初演。83年に亡くなった寺山修司へのオマージュであり、「唐版臓器交換序説」と呼ばれる。初演では李礼仙さんは離れ、田中容子、六平直政、金守珍らによって演じられ、この時の映像はNHK衛星放送で何度か放映されている。唐組になってからも何度か再演され、不二稿京、桜井ひとみ、飯塚澄子らがヒロイン「くるみ」を演じた。百本以上になる唐十郎戯曲の中でも傑作のひとつである。

 ホフマンをモチーフにしながらも、人から人へと移植される詩人寺山修司の「ジャガーの眼」を追い求める「くるみ」と、人形サラマンダに取り憑かれている田口(=唐)とが複雑に交錯する、交換と代行の物語。それと知らずにジャガーの眼の角膜移植をされた平凡なサラリーマンしんいち、死んだ犬の「ちろ」を生き返らそうとする中学生の少年、体中が他人の臓器や機械に置き換えられている外科医「ドクター弁」、人の思考を遮る(無意識の検閲官)トビラ、と魅力的なキャラクター満載で、観客の脳髄にずかずか入り込みかき乱す、まるで脳内撹拌装置のようなあの傑作がこの秋帰ってくる。

 ちょうど唐さんを大学に招いた97年の秋に、ぼくはこの作品に出会った。水戸芸術館と雑司ケ谷鬼子母神の紅テントの中で頭をガーンと殴られたような強烈な経験をした。あの時の、飯塚澄子のくるみと鳥山昌克のしんいち、金井良信のトビラ、稲荷卓央のドクター弁、藤井由紀の少年、そして言うまでもなく唐十郎の田口も素晴らしかったが、今回稽古場公演で見た、赤松由美のくるみと藤井由紀のサラマンダ、そして秘密の少年役(秘密!)のキャスティングは、もしかするとそれを越えるのではないかといううれしい予感をもたらしてくれた。

 唐十郎が田口を降りたのがちょっと残念だが、その代わりに稲荷が唐の「ジャガーの眼」を引き継ぐかのように新鮮な田口を演じていることと、今回新たに書き加えられた唐のための新しいキャラクター闇坂が登場するのが楽しみ。今回見た稽古場公演に、客演中で欠場している丸山厚人と久保井研が重要な役で加わる今回の「ジャガー」はもしかすると唐組の歴史の中でも伝説の舞台になるのではないかという期待が高まる。

 寺山の「ジャガーの眼」の中でしか生きられず、寺山の死後もその角膜を移植された男を探し求める「くるみ」(くるみは脳味噌に似ている)と、田口=唐の眼の中でしか生きられないサラマンダ(火喰いトカゲであり、不死の象徴)という「脳内美人」に取り憑かれた人々が繰り広げるオペラの中で、田中容子、桜井ひとみの路線を引き継ぐ赤松由美が白いスーツをまとって宝塚の男役のように歌い踊りながら登場するシーンの陶然とするような美しさと、完璧な人形のような手足をもつ藤井由紀のサラマンダはまさしく唐十郎の脳内美人として、これまでで最高の出来だった。それともう一つの隠し玉の少年(秘密!)を演じる新人女優にも刮目した。

 そんなこんなで終わった後の宴会も盛り上がる。唐さんはまだ二幕・三幕の書き直しがあるので、緊張感に満ちてはいたが、うれしそうだった。公演は十月一杯の週末、井の頭公園ジブリの森で始まって雑司ケ谷鬼子母神も回る。

 そんな余韻の残る中、久保井研が客演している「庭劇団ペニノ」の『星影のJr.』を見にザ・スズナリに行くと、偶然、唐組屋台村公演バージョンでくるみを演じた桜井ひとみさんも来ていて、終わった後いろいろその頃の思い出話を聞けたのもシンクロニシティというもので面白かった。その他、前の週には流山寺事務所の「由井正雪」も本多劇場で観劇。原稿などでいろいろ追い込まれてはいるのだが、夏休みっぽい八月前半であった。

« 七月から猛暑が止まらない。 | トップページ | 横浜トリエンナーレ2008開幕 »

「文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/16230/42209209

この記事へのトラックバック一覧です: 唐組秋公演は「ジャガーの眼2008」:

« 七月から猛暑が止まらない。 | トップページ | 横浜トリエンナーレ2008開幕 »

最近のトラックバック

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31