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2010.05.15

第30回日本記号学会「判定の記号論」と光州事件30周年記念展「The Flower of May」(1)

 5月8日と9日は、神戸大学で日本記号学会大会。新会長・吉岡洋、事務局長・小池隆太、編集委員長・前川修という新執行部による初めての大会が開かれた。

 神戸は、80年代に長田にある神戸学院女子短期大学というところに非常勤で通っていた。三宮で何度か飲んだこともあるが、それ以降訪れる機会はなく、甲南大学でやはり記号学会が開かれた時にも三宮まで足を向けることはなかった。だから、95年の震災以降の神戸を知らない。といっても時間もないので、新神戸から六甲に行く途中に通り過ぎたのと、二日目の朝ご飯を食べにでたくらいだが、三宮辺りの印象は昔とあまり変わらないように思われた。初日は「裁判員制度」をめぐるセッション。瀧川記念学術交流会館という超絶眺めのいい場所で開かれた。終わった後は会場で懇親会、そのあとはJR六甲道付近の居酒屋で二次会。結構遅くまで楽しく談笑した。

 次の日は午前中に研究発表、午後には岡田温司+檜垣立哉、吉岡洋+稲垣正浩各氏によるセッションがあり、盛りだくさんな会だった。神戸大学の学生たちの発表もよく頑張っていたし、何よりも30-40代の若手の参加が多かったのが心強い。20周年の時には記念出版『記号論の逆襲』を出したが、まあ考えてみたらよく30年も続いたという思いもあるが、何しろ日本では珍しい自由で何でもできる学会なので、何とか頑張って続けて行きたいものだ。来年も、若手が刺激的な大会を企画してくれそうで楽しみだ。

 深夜に帰宅し、そそくさと荷造りをして、翌10日は韓国・光州に出かける。羽田からソウルの金浦空港までは2時間。ビジネスクラスなのでラクチンだ。ただ、そこから光州までの乗り換え時間が長くて少し待ちくたびれた。7:30頃ようやく光州空港へ。ビエンナーレ事務局から女の子が迎えに来てくれ、一緒に参加する森美術館学芸員の片岡真実さんと共に市内にあるラマダ・インターナショナル・ホテルへ。最近建ったばかりらしく、周辺には高層ビルと建設予定地の空き地がひしめいている。繁華街なのでコンビニや飲み屋も沢山ある地区だ。とりあえず近所を散歩してビールを飲んで寝る。

 次の日、ホテルに迎えのバスが来て、大量の欧米人、アジア人と一緒に会場となっている全南大学へと向かう。広大な敷地に14もの学部があるマンモス国立大学だ。その中にある会議場でシンポジウムが開かれるようだ。今回の企画は、光州事件30周年を記念する大規模展覧会「The Flower of May」の一環としてシンポジウムとスペシャル・パフォーマンスが開かれるというものである。展覧会やパフォーマンスに参加するアーティストたちも一緒にこのシンポジウムのオープニングに参加するらしい。というわけで、オープニングは賑やかだった。背広を着た地位のありそうな韓国人の参加者もかなりいて、会議は英語・韓国語の同時通訳で行われる。

 光州ビエンナーレ副事務局長(但し、事務局長は光州市長なので実質的にはこの人がボス)のイ・ヨンウ(Yongwoo Lee)氏による開会宣言から始まり、韓国の詩人と「アジアの文化ハブ都市事務局長」によるセッション。どうやら光州はビエンナーレをさらに発展させて、デザイン・ビエンナーレ、アート・フェア、機関誌「Noon」の公刊などを軸にアジアの「文化センター」になろうとしているらしい。このセッションが終わった後、会場に居たテグ出身の大学教授が「文化予算の分配が不公平で、アーティストたちの未来は暗い」というような発言をして、いきなり大論争になる。イ・ヨンウが激高して「そんなことはない。ビエンナーレの予算は5億ドルから7億ドルになり、来年は10億ドルになる」というような発言をして、正直その金額の多さにビビる。建物や施設も含めての予算なのだろうが、それにしても凄い。今回だけでも40-50人の外国人を招待しているが、それくらいは何でもないのだろう。横浜トリエンナーレなど国内の国際展の予算は数億円だろうから、金額的には二桁違うということになる。なぜ、韓国政府はそんなにも現代美術に文化予算を拠出するのだろうか。もちろんそこにはそれなりの計算が働いているはずだ。

 午前中は、ロンドン大学ゴールドスミス校で美術史を教えるRichard Noble氏の発表。現代美術におけるユートピア思想の重要性というような話だが退屈。ディスカッションに参加したのは、展覧会参加のアーティスト、Rainer Ganahl, Jung Kumhee, Caecilia Trippらだが、テンションがものすごく高くしゃべり続けるライナー・ガナールはトリックスター的で、ちょっとうるさいと思ったが、結局は仲良くなる。彼は日本語も結構しゃべれるし、柄谷行人さんがニューヨークに居た時に仲良かったらしい。

 お昼は大学の食堂で、韓国式バイキング。余談だが今回せっかくの韓国なのに食事がよくない。安くておいしそうな店は沢山あるのだが、接待なのでそうもいかない。ホテルの朝食も普通だし、ディナーも一日目はアジアン・ヌーベル・キュイジン、二日目は韓国流高級日本料理レストラン。結局一番おいしかったのは帰国する日のお昼にライナーと一緒に入ったクッパ専門店と、行き帰りの機内食だった。

 一日目の午後は、アーティストAlfredo Jarrと、ニューヨークのアジア・ソサエティのキュレータMelissa Chiuの発表がそれぞれ面白かった。
Jarrは去年横浜で開かれた「国際映像展CREAM」にも参加しているチリ出身のアーティストで、街の中に繰り出して行く「Public Intervension」タイプの作品が面白い。とりわけ、トロントで行った作品が面白かった。ヴォディチコとも近い関係にあるアーティストだが、発表は過激で面白かったものの、普段は口数が少なく、二日目も全くしゃべらない。暗い感じの人ではあるのだが、どうも相当居心地が悪そうだった。メリッサはやり手のアジア専門のキュレータでオーストラリア出身。現在の中国、韓国、日本の状況を幅広く捉えており、美術マーケットが加熱し、美術館や美術展が大きくなりすぎている現状に危機感を抱いている。ただ、あくまでもアートワールドのインサイダーであり、余り理論的なことには関心がないようだ。

 ほとんど議論をする時間もなく、6:00から始まるパフォーマンスのために会議は中断。みんなで外に出てArto Lindsayらによる特別パフォーマンスの開始を待つ。韓国人の学生たちを60-70人使っていて、建物全体を使ってのパフォーマンスによって始まるが、中身はただのバンドによるショー。サンバやボサノバ、ノイズ風なアレンジもあったが、ほとんどが3分程度の普通のポップスで、とても退屈。8:30くらいまで続いたが退屈してバスに戻ると、メリッサとライナーがいて、一緒に悪口を言いまくる。バスでレストランに移動。すると、そこには展覧会の全参加者が集まっていて一緒に食事。片岡さんと打ち合わせをしていたアイ・ウェイウェイ(芥未未)がここで合流。アイ・ウェイウェイは昨年六本木の森美術館で片岡さんと一緒に展覧会をやっているが、これが今年アメリカ各地を巡回するらしい。巨漢で、日本に来た時には「ラッシャー木村」と間違えられたりしたらしい。物静かだが、写真を撮るのが好きらしくデジカメを出してみ写真を撮りまくっている。とにかく、いま一番注目されている中国人アーティストなのでいろんな人が挨拶にやってくる(し、彼の正面に座ったぼくの隣のライナーがひっきりなしに話しかけるので)、この日はあまり話せなかったが、二日目にいろいろしゃべることができた。終わったのが11:00過ぎなので、この日もビールを飲んで寝る。
(続く)

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