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2010.07.03

蛇姫様

 さぼっている間に、劇団唐ゼミ☆第17回公演「蛇姫様〜わが心の奈蛇」が始まった。「奈蛇」は無理やり「ナジャ」と読ませる。アンドレ・ブルトンの「ナジャ」のことだ。唐十郎の「ナジャ」は大人になってしまった少年探偵団の小林少年が肩に変わった模様のアザをもつ国籍をもたない少女と出会ったことから始まる。

 本日7月3日に初日が開け、4,9,10,11,16,17,18,19日と9回、浅草花やしき裏の青テントで、毎晩午後6:00開演である。テントなので開場時間の5:30には間に合うようにしようと思うと、まだまだ太陽の高い時間だ。周辺住民に配慮して夜9:00には音響を落とさなくてはならないという条件なので仕方がない。唐十郎が最も旺盛な生産力を見せた1977年春に状況劇場で初演された作品。この時に見に来た歌舞伎俳優の中村勘九郎(現・勘三郎)がまるで草創期の歌舞伎とはかくのごときものかという大きな衝撃を受け、ついには「平成中村座」というテント劇場まで作ってしまうことになるきっかけを作った作品である。本人が執拗に唐さんにそのための新作を書いて欲しいと頼んでいる現場にも同席したが商業演劇システムが嫌いな唐さんには通じず実現はしなかった。とは言え、「吸血姫」、「二都物語」、「ベンガルの虎」、「唐阪・風の又三郎」と立て続けに傑作を繰り出していた少しあとの時期なので、多少マニエリスティックでくどい部分もあるかもしれない。通常の倍のイメージの氾濫に満ちており、普通に読み合わせするだけでも3時間半はかかるこの作品を演出の中野敦之は10分間2回の休憩を含めて3時間にまとめあげた。まるで機関銃のようなスピード感あふれる舞台になった。

 ここ数年、唐ゼミでは主力級の男優が次々に脱退してやや俳優の厚みに欠ける舞台が続いていたのだが、今回の見所は古手として残った安達俊信と土岐泰章の成長だ。特に土岐の成長は著しい。主演の椎野裕美子(いつも素晴らしいが今回は特に技術的に大躍進している)や初演では清川虹子が演った重要な役の禿恵の天来の不思議な怪演が圧倒的にすごいが、安達と土岐にも注目していただきたい。やや若手になるが熊野晋也・井上和也のコンビと水野香苗と小松百合のすりの姉妹、さくら夢羽奴なども急速に進歩している。まあ、この辺りは本番中の成長にも期待したい。あと、今回とんでもないキャラクターだが重要な役を演じている重村大介の日本語がボイストレーニングの成果か少しは聞き取れるようになっているのにも注目(笑)。まあ、とにかくいろいろな意味で「満載」な芝居だ。

 2009年の2月〜3月に、この作品は菅野重郎が主宰するRUPプロデュース、「北の国から」の杉田成道演出で銀座のル・テアトル銀座で上演された。劇団唐組の鳥山昌克君も出演しいい味を出してはいたが、商業演劇仕様で大幅な台本カット、主演もExileのUSAといまひとつの出来だと言うしかなかった。ただ、尋常ではないメタファーの乱射と浮かび上がるおぞましくもぎらつく世界観の片鱗に触れ、唐ゼミの中野は自分でもやってみたくなったようである。

 花やしきは昨年の「下谷万年町」以来2度目だが、浅草花やしきという場所は確かに「蛇姫様」というタイトルとはぴったりのように思われるが、本当はぴったりしすぎていて作品の持っている広がりがあまり伝わらないのかもしれない。何しろ、唐が頭の中に描いていたのは、1920年代のパリでブルトンが出会った、「ロシア語で希望という言葉のはじめの音であるという」ナジャという少女のことだったのだから….。まあ、昭和モダンの頃の浅草であったらそれも正しかったのかもしれない。

 予定の許す限り、毎日現場にいるつもりです。場内はかなり暑いですが浅草散歩がてらどうぞ足を向けてみて下さい。

 そう言えば5月から芝居には結構行った。唐組「百人町」、DogaDoga+「贋作・伊豆の踊子」、南河内万歳一座「びっくり仰天街」、新宿梁山泊「ベンガルの虎」。それぞれ「その筋」の芝居だけど、それが今年はどんどん続く。花園神社に赤と紫、浅草花やしきには青のテントが立ったわけだ。そのうえ座・高円寺での唐組の久保井研演出「少女仮面」も月末には待っている。

 北仲スクールの授業の方ももう終盤で、来週のアーバンアート論Aのゲストは東京芸大の熊倉純子さんをお迎えする。月末で前記は終了。夏休みにはリセットしていろいろなことを仕掛けていきたい。

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