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2011年11月

2011.11.05

「大唐十郎展」始まる

 11月1日から、桜木町「ぴおシティ」地下2階での展示が始まった。「袋小路展示場」、「喫茶肉体」、「野毛トランク座」の三部構成。通路脇の4軒の空き店舗を借りたのだが、喫茶店とうどん屋は居抜きでそのまま営業できる状態。カウンターと椅子席の小さなうどん屋でも展示を考えたのだが、あまりにうどん屋のままなので諦めて事務局スペースにした。

 この企画、去年の秋に唐ゼミの中野敦之に相談を持ちかけたのだが、内容や運営に関してはすべて中野と唐ゼミにまかせて、ほとんどぼくが口を出す必要はなかった。8月のヴォディチコ・イベントが余りにも大変だったので、時々経過報告してもらって意見を言うくらいで、すべて任せっきりにしていたのだが、想像以上の出来映えでとても満足している。北仲スクールでやった、旧日本鋼管体育館での椿昇展、ヴォディチコとのプロジェクションと国際会議に並ぶ大型企画として誇りうる素晴らしい展覧会である。

 桜木町ぴおシティは昭和43年(1968)年。つまり、唐十郎が初めて新宿花園神社でテント公演を行った年に誕生した複合ビルで、競馬・競輪の場外車券場があり、近くには野毛のウィンズ横浜もあるので競馬・競輪の客でいつも賑わっている。地下二階の飲食街には、昭和を感じさせる喫茶店やパチスロ屋、立ち飲み屋が軒を並べ、朝から立ち飲み屋に人が群がるまるで戦後の闇市のような雰囲気を保っている。ただ、ある意味ギャンブルに特化したビルであるために空き店舗も多い。ここで「路地の展覧会」を開くことになった。オープンする時間は一般画廊に会わせて昼13:00から。東京から来る人のために夜8:00まで開けておくことにした(月曜休館。この時間を過ぎると、11:30までやっている地下街なので治安上の不安もあり)。

 まず、パチンコ屋の向かいにある「袋小路展示場」は、元中華料理店跡を全面的に作り替えて、お化け屋敷のような回廊となっている。展示されているのは、状況劇場、劇団唐組の芝居に使われた衣装・小道具や舞台装置。もちろん、観た人にはたまらなくなつかしいものだろうが、見ていない人たちも十分に楽しめる構成になっている。モニターにはそれらの小道具が使われた舞台映像がダイジェストで流れている。ちなみに、「袋小路」とは初期状況時代「腰巻きお仙」シリーズで麿赤兒さんが演じた当たり役「ドクター袋小路」から取られた。

 通路を挟んでその向かい側「野毛トランク座」。ここでは入手することがきわめて困難な状況劇場と唐組のビデオが日替わりで上映されている。どれだけの人が見てくれるのか分からないが、ここではダイジェストをやめて全編上映している。椅子も用意してあるのでじっくり楽しみたい人は通って欲しい。上映プログラムに関しては係の者に聞いて欲しい。かつて市販されたものばかりではなく、独自ルートで入手したきわめて貴重な映像も含まれている。「蛇姫様」、「女シラノ」、「新二都物語」、「電子城1,2」等々。日替わりで丸一日楽しめる無料の映画館となっている。

 そして路地の逆側には「喫茶・肉体」。「少女仮面」の舞台となっている喫茶店から名前をつけた。ここでは、ガラスケースに入った貴重な書籍、ポスター、上演台本などのほか、テーブルの上にはファイルされた雑誌記事やパンフレットが置かれている。また、会場にはいつも状況劇場の劇中歌が流れていて、なつかしい昭和の喫茶店が再現されている。残念ながら会場内は飲食禁止になっており、コーヒーを飲むことはできない。

 そして、11月4日。超目玉企画の第二弾「21世紀リサイタル〜うたと唐十郎『四角いジャングル』2011」が、赤レンガホールで開催された。「四角いジャングル」は、1973年に状況劇場が後楽園ホールでやった一晩限りのコンサート。きちんと唐さんが台本を書いて、録音はレコードとして発売された。その中から、唐さんが歌った曲のうち「さすらいの歌」、「月がかげれば」、「時はゆくゆく」、「ジョン・シルバーの歌」が再演され、その翌年の74年の「又三郎のテーマ」。全5曲を唐さんが歌った。それに「吸血姫」、「鐡假面」、「海の牙」、「蛇姫様」といった状況劇場の劇中歌、「透明人間」、「鯨リチャード」、「夕坂童子」などの唐組の劇中歌、「下谷万年町物語」、「風のほこり」など全28曲が、安保由夫、大久保鷹、稲荷卓央、近藤結宥花、椎野裕美子、渡会久美子などの豪華出演陣によって、芝居を差し挟みながら歌い上げられた。司会は十貫寺梅軒と赤松由美。満員に近い客席には唐組常連の皆さんに加えて、石橋蓮司・緑魔子、松岡正剛、佐野史郎、秋山祐徳太子、松田政男などの錚々たる面々。伴奏には38年前と同じ小室等、NRQ+向島ゆり子、張紅陽(めいなCo.)。そして、新宿梁山泊+唐組の作曲家・大貫誉、劇団唐ゼミの作曲家・サトウユウスケが参加した。唐ゼミの椎野裕美子は「鐡假面」の時の深紅のドレスと鬘をまとい四曲を歌った。2005年の「唐版・風の又三郎」韓国ツアーを最後に引退した、元新宿梁山泊の近藤結宥花が日本では7年ぶりに表舞台に復帰。「吸血姫」から「ガラスにキスをしたら」、梁山泊版の主題歌「ほうずきの歌」、そして2001年に唐組に客演した名作「闇の左手」からテーマ曲と3曲を熱唱。台詞も入って、全く変わらない姿を見せた。終演後の宴会でも復帰を望む声しきり。彼女の最後の舞台に関しては、このblogでも昔いくつか書いたことがある。驚くべきことに彼女が活躍していた中心の時期はこのblogよりも以前の時期だ(ホームページにもどり、過去の短信を参照しなくてはならない)。たとえば、2005年8月のソウル公演の記事と、全州公演の記事。それにしても時の流れは早い。

約400名の観客は、この夢の夜に熱狂し、アンコールで歌われた「ジョン・シルバーのテーマ」を大声で、あるいは小さな声で口ずさんだ。この様子は3組のクルーによって映像で記録されたが、そのうちの一組"TAEZ"さんから、冒頭のシーンの映像がYoutubeにアップされている。続けてダイジェストが紹介される予定なので注意して頂きたい。

 ぼくが唐さんと知り合って15年、中野たちが大学に入って12年。10年以上の長い時間をかけて初めて実現できたことだ。思えば、2001年に唐さんが第一回花園賞を受賞した時、花園神社に張られている紅テントで受賞パーティを開いた。あの時には、中野たちもまだ学生だし、唐組や梁山泊の金守珍さんなどの協力を得て手探りでやった。麿さん、四谷シモンさん、大久保鷹さん、佐野史郎さんも歌ってくれた。公演中だった近藤結宥花さんもやはり闇の左手を歌い、稲荷も歌った。楽しいパーティだったが、それから10年を経て、いろいろな人との関係も深まり、唐ゼミを応援してくれる人たちも増えて、これだけのことが実現できたのだと思う。基本的にはすべて唐ゼミと北仲スクールの学生によって運営されたが、音響に関しては開港博覧会やヴォディチコ・イベントでもお世話になった㈱ドリームの則行さんにお願いして、素晴らしいコンサートが実現できた。ぼくにとってきわめて感慨深い夢のコンサートだった。

 先週「西陽荘」の千秋楽を終えたばかりの唐さんは、疲れが顔に出てリハーサル中は不機嫌だったが、リングの上でのリハーサルからは目に見えて高揚。本番では一番元気に見えた。終わったあとは、2002年に唐組が同じ赤レンガホールのこけら落としの時と同じようにカフェスペースにゴザを敷いて大宴会。100人近い人が残った。ちょっと残った関係者が多すぎたかもしれないが、それだけみんな喜んでくれたのだと思う。唐さんは中野に送られて高円寺に戻った。アトリエで二次会が繰り広げられたことだろう。

 「大唐十郎展」はまだまだ終わらない。12,13日には劇団唐ゼミの「海の牙」。今の青テントのお披露目で「ジョン・シルバー」再演以来、7年ぶりに臨港パークの海沿いにテントを張る。長野公演を経て、芝居の成長が楽しみだ。地元横浜での公演も久しぶり。これも見逃せない。いつもより開演時間が早まるので注意されたい。そして、19,20日には、シネマ・ジャックアンドベティの大スクリーンでの「追跡・汚れた天使」上映会。いわく因縁付きのどこでも見られない貴重な映像だ。70年代の唐が唯一監督し、直前に放映中止となったテレビドラマ。ある意味で、最も唐らしいシュールレアリスティックで怪物的な作品である。全盛期の状況劇場の役者たちにも出会える。まだまだ夢の夜は続いていく。
 

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