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2012年2月

2012.02.11

2/14-20@浅草--劇団ドガドガプラス公演へのお誘い

 映画監督の望月六郎さんと知り合ったのは、唐さんの紅テントの中だった。芝居がはねた後の宴会で、初対面のぎこちない感じではあったが、その日の芝居についてお互いに感想を交わし合ったのが最初である。それからもう15年くらいは経っていると思う。
 そのちょっと前に、望月さんは故・原田芳雄さん主演の『鬼火』(97)を監督していて「キネマ旬報」などで監督賞を取っていた。ちょっとシネマ・ノワール風でカメラの長回しなどを入れたお洒落な映画だったので、目の前にいる望月さんのイメージにはちょっと違和感があった。醤油屋の藍染めの前掛けのパッチワークで作られたジャケットを着ていて短髪でモミアゲが長く、無精髭をはやしいる。どちらかと言えば肉体労働者風だ。だが、子供のようなキラキラした目で、中学生時代から見続けてきたという唐さんの演劇世界の魅力について熱く語ってくれたのが印象的だった。
 その時に、「『鬼火』は賞狙いでわざとフランス映画っぽく撮ったんですが、ぼくにはこっちの方が大切な作品です」と言って、自分で監督した「新極道記者・逃げ馬伝説」(96)という唐さん主演のVシネマのビデオを貸してくれた。その後、望月さんは花村萬月原作の「皆月」(99)という文句なしの傑作も世に送り出しているが、同時に「通貨と金髪」(99)というかなりユニークでダーティなアダルト映画も作っており、いわゆる作家系の監督でも職人系の監督でもどちらでもない、独自のモノ作り哲学を持っている人であることがわかった。それが一番よく現れているのが、一般映画での監督の処女作とも言える「スキンレス・ナイト」(91)である。
 主人公はアダルトビデオの監督で、ほぼ望月さんの私小説映画とも言える作品だ。これを見ると、芸術や文学の透き通った世界と通俗的で情欲と妄想にまみれた生活の間に引き裂かれていながらも、そのどちらの側にも行かず(行けず)、聖と俗のはざまのぎりぎりのところでスパークすることによって一挙にその両者を融合させようとでもいうような(まだ、どういう言い方が適切なのかよく分からないが、要するに聖と俗の両方を強引にそして一瞬のうちに超高速で往還させるような)スタイルが彼の持ち味であることがよくわかる。このことを元状況劇場の大久保鷹さんと電話で話していたら「下町のヘルダーリン」という言葉が突然頭に浮かんだ。天空にイカルスのように飛び立とうとしても、大地に引き戻されて虹のような弧を描いて墜落する、古代ギリシャの青空に憧れたあのゲルマン詩人––ハイデガーが何度も論じたヘルダーリンの名前を突然思いついた。古代ギリシャへの憧れは似ていないけれど、それでも青空は見えてくるような気がする。。
 望月さんは映画の世界でだけでは物足りなかったのか、誰にも頼まれていないのに大長編SF伝奇小説を書いたりもしていたのだが、50歳を目の前にした6年前に突然劇団を立ち上げた。それが劇団ドガドガプラスである。最初は若いダンサーたちを集めて浅草軽喜劇とレヴューを組み合わせたようなエンターテイメント演劇を目指していたようだが、回を重ねるたびに、上に述べたような望月さんの独自の作家性のようなものが色濃く現れるようになってきて、それがとても面白くなってきた。それについてくる劇団員たちもどんどん入れ込んできていて素晴らしい集団になってきている。今回は執筆中の台本まで見せてもらったがこの「贋作・春琴抄2012」のホンはとてもよくできている。歌と踊り満載のまるで曲馬館のような美しく楽しいステージなのだが、日本の近代史の中に生きてきた人々と現在のぼくらの状況を見透かすような視線によって貫かれている。浅草の寄席「東洋館」(渥美清、井上ひさしや萩本欽一、ビートたけしらが育ったストリップ劇場元フランス座)を舞台にして、きらびやかで物寂しくも生きる意欲を高めてくれるようなどこでも出会ったことのない真正の演劇空間が繰り広げられるのだ。
 というわけで、宣伝です。というよりも呼び込みです。このところずっと面白いのだが、今回はその中でも特に面白いと思う。浅草に足を運んで、一度は見ておくべき価値のある出来事にきっとなるでしょう。最近、シアターコクーンの「下谷万年町物語」や、富田克也監督の「サウダージ」で何となくすっきりしない感じがしていただけに、Dogadoga+の初日が開くのがとても楽しみで仕方ない。ぼくは何度も行きます。皆さんもだまされたと思って、是非一度足を運んでみて下さい。今回のチラシにぼくが書いた、呼び込みの文章も下に再録しておきます。
 
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『贋作 春琴抄』
http://www.doga2.com
2012年2月14日(火)~2月20日(月)
連日 19:00~公演

作・演出=望月六郎

■ チケット料金 全席自由席

予約サイト
https://ticket.corich.jp/apply/33393/006/
一般  前売料金 4,000円/当日料金 4,500円
学生  前売料金 3,000円/当日料金 3,500円
*学生チケットの場合には受付にて学生証の提示をお願い致します。
*御来場日時変更の場合は3日前までにお気軽に連絡下さい。

お問い合わせはこちら・・・
ドガドガプラス http://www.doga2.com

■ 会場   浅草東洋館(浅草演芸場4F・旧フランス座)
住所 東京都台東区浅草1-43-12
浅草六区交番前
(浅草演芸ホール右隣入口)


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今度はどんな「星」に出逢えるのだろう?   室井 尚

 三度も同じ書き手では飽きられるのではないかと言ったのに、「これで最後にしますから…」と、またしても望月さんに押し切られてしまった。で、また呼び込み文を書いている。
 ぼくは演劇評論家ではない。たまたま、唐十郎さんを大学に呼んで、集まった学生たちと一緒に「劇団唐ゼミ☆」を育ててきただけのことである。望月さんは自分のことを「唐さんのエピゴーネン」と言う。それほど好きなのは凄いけれど、ぼくの目からみるとDOGADOGA+はそれとは別の全くオリジナルな劇団だと思う。これと似たものは世間を見渡してもそうそう見つからない。
 ノリのいい劇中歌と、若い踊り子たちの伸びやかなダンスシーンだけがDOGADOGA+の魅力ではない。有名な文学作品をモチーフにした一連の「贋作」シリーズは、日本の近代史の闇を照射し、そこに加担したり巻き込まれたりしてきた日本人たちの崇高さと卑小さを、「性」と「死」のエネルギーのせめぎあいの中にくっきり浮かび上がらせる一貫したスタイルをもっている。めくるめく肉体の乱舞の中で、ぼくたちは歴史と無意識の闇を下降し、そこから女の子たちの眩しい太腿の間を通り抜けて光へと上昇していく感覚に襲われる(ホントか?)。
 ホンモノの演劇には「異界との交信」が必要である。「あの世」とか「アナザーワールド」と呼んでもいい。そして、その異界への入り口には必ず濃密な性の香り、エロスの霧が立ちこめている。そんなことに…とりわけそんなことだけに…とても忠実なのがDOGADOGA+のオリジナリティだ。
 「贋作・春琴抄」(初演・2007)は、ぼくが初めて観た演目であるだけに一際楽しみである。最強の形に改訂されているに違いないけれども、あの曲馬舘のようないかがわしさとドライブ感はそのままに違いない。そして回を追うごとに進化し続ける女優たち。前回の「贋作・たけくらべ」でむんむんする女の情感と悲しみを全身から放っていた戸田佳世子、コメディエンヌとして小気味よく舞台を回していた浦川奈津子と黒沢美香、サナギから蝶へと変態していく超少女・中田有紀、新人、ゆうき梨菜。そして、前回は休演した小さなヴァンプ・kumiCoも一年ぶりに戻ってくる。みんなとても可愛く、美しい。未知の女優も複数名登場してくるらしいし、ダンサーにも注目だ。  密かに楽しみにしているのが男優たちである。劇団員の奈良坂篤、丸山正吾、菱木聖仁はもちろんのこと、前回突然現れて観客の心をさらっていった赤祖父大尉こと前田寛之、忘れちゃいけない唐ゼミ☆の安達俊信。このところ度肝を抜くような新人に驚かされている。さて、今度は浅草・東洋舘でいったいどんな星たちに出逢えるのか、いまからとても楽しみだ。
(むろいひさし:横浜国立大学教授・劇団唐ゼミ☆仕掛人)

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