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2012年5月

2012.05.20

記号学会、劇団唐組とかいろいろ

 5月12日と13日の両日、神戸のファッション美術館で日本記号学会の第32回大会「着る、纏う、装う/脱ぐ」が開催された。日本記号学会は1980年に設立され、ぼくは1983年からずっと参加している学会である(もうそれから30年近く経過していると考えると感慨深い)。初代会長はヤコブソンの紹介者としても知られる言語学者の川本茂雄、それから伊藤俊太郎、坂本百大、久米博、森常治、山口昌男らが会長を務め、2001年から2006年まではぼく、続いて菅野盾樹、吉岡洋が会長を引き継いでいる。初期の賑やかさもほんの一瞬のことで、記号論ブームも去ってから久しく、既に90年代からどうやって学会を維持しようかということばかり考えなくてはならなかった零細学会だが、このところ大会はとても面白い。創設以来、「記号学研究」(北斗出版、東海大学出版会)「叢書・セミオトポス」(慶應大学出版会から新曜社)と、年刊の学会誌を出版社に委託して書店売りのできるような形で頑張ってきたが、その売り上げもあまり芳しくなく、よくここまで潰れずにきたものだが、最近は何よりも若手のメンバーや学会員が増えたことでぐっと魅力的な学会になってきている。いま日本で一番面白い(とまで言うと言い過ぎだが、面白くなりそうな潜在的可能性を秘めた)学会なのではないだろうか?
 今回の大会は『闘う衣服』という著書がある小野原教子さんが実行委員長となり単なるモードやファッションの話ではなく、「着る」こと、そして「脱ぐ」ことの根源にまで掘り下げようとした企画で、多彩なゲストを交えた各セッションが面白かった。時間配分やまとめが弱いなどの欠点は多々あったものの、「衣服」を、「環境」や「都市」や「国家」にまで広げて、まさしく一枚の大きな布を広げて世界と自分との間を纏いこむものとして捉えようとした大胆な企画であり、1日目の夕方に行われた西沢みゆきさんの「新聞女」パフォーマンスが、世界各地の新聞紙や新聞広告をその場で即興で衣服にしていくように、情報やメディアや都市そのものをも「着ること/脱ぐこと」(アタッチメントとデタッチメント)として見ていく視点の豊さが感慨深かった。若手の女性研究者たちもそれぞれ元気で面白く、今後の活躍を期待したい。一泊二日だけの短い神戸滞在だったが、学会が終わった後、近くのファミレスでも話が盛り上がり、危うく最終の新幹線に乗り遅れるところだった。
 5月19日には、新宿花園神社で公演中の紅テント、劇団唐組の第49回公演「海星」へ。実は、5月6日のあの竜巻と雹が降った大荒れの日、水戸芸術館での同公演にも日帰りで行ってきた。唐さんは昨年春の「ひやりん児」、秋の「西陽荘」、そしてこの「海星」と新作3本を続けて上演しているばかりでなく、新宿梁山泊に「紙芝居」、そして劇団唐ゼミ☆に「木馬の鼻」を提供しており、もの凄い創作意欲だ。その上、今年の秋に上演する新作も現在執筆中だと言う。そして、今回のこの「海星」はまた特に面白い。墨田区を舞台にスカイツリーと地の底、水底に取り憑かれた人々の対立を軸に、予想もつかないイメージの跳躍が矢継ぎ早に繰り出されていくスラップスティック喜劇であり、1時間半の上演時間は濃密でとても長く感じられる。1〜2月のシアターコクーンでの「下谷万年町物語」効果か、久しぶりにテントは連日大入り満員。是非、この作品は見て欲しい(そう言えば、うちの一年生の授業でも話したのに、見たところほとんど来ている学生はいなかったな。勿体ない)。
 それ以外にも5月8日には大学に水戸芸術館の主任学芸員・高橋瑞木さんに来て頂いて貴重なお話をうかがったりもした。高橋さんの最近の旺盛な活動には目を見張ることが多く、12月の高嶺格展に向けての意気込みも聞くことができて楽しかった。この展覧会は是非伺いたいと思う。

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